キスより甘くささやいて
「後さ、今は俺はgâteauに寝泊まりしてるんだけど、家も建ててる。
昔の家はなんだか生活感がなくって、落ち着かないとおもって、
もう少し温かみがある感じの家にしてあるよ。
gâteauの土地は借りただけだから、予算が余って、家を先に建て直すことにしたって訳。
妻の意見は内装部分をこれからするって事でどう?
俺の父親会社の役員してたから、自社株を結構持ってた。
妹の夏希の旦那がもうすぐ、東京に戻って、その会社を継ぐんだ、
旦那に株を売って、俺は現金を得たって感じ。
だからさ、家を建てたら、たくさんお金は残らない。
贅沢三昧は出来ないけど、でも、俺は美咲を大切にする。
きっとだ。
約束する。
夫婦は一緒に住むのが基本だと思うんだけど、
一緒に住んでくれる?」と聞いた。

「半年前に住んでた家がなくなってたのはそのせい?」と私が聞くと、颯太は、うなずいた。
「あの場所は私も好きよ。」と微笑む。颯太はニッコリした。そして、
「結婚式はどうする?」と聞く。私は少し考えて、
「新しいgâteauでするのはどう?
私達が始まったのはgâteauからだし。
そうだ、颯太、私達、結婚するんだよね?
3年前にプロポーズされてたけど、今もそっれて有効なのかな?」
とそれはキチンと確認しておきたいと思う。
颯太は笑って、
「美咲、婚姻届書いたじゃん。」と言って、
「先月、帰ってきて、そのまま出しに行ったけど。
…3年前、俺が出しとけって置いていったにも関わらず、サインはしたけど出してないって、
どーいう事だよ。って事で、美咲は1ヶ月前から書類上も俺の妻だよ。」
と機嫌が悪そうに額にシワを寄せた。
「あ、そうそう、潮騒療養所には、籍を入れたって言っといた。
看護師の免許、苗字の変更届けを出して、免許、もう一回出しって言ってた。」
とあっさり言った。

…何て事だ。
「……」私は驚きすぎて返事ができない。
「美咲、俺から逃げられるとおもってるの?」い、いや、
「どんなに離れてても逃げられなかったし。逃げるつもりもありません」
と言ったけれど、私は呆れた顔で颯太を見る。

颯太は満足そうににっこり笑い、私の耳元で
「愛してるよ、美咲。永遠に。」と甘い声で囁いた。
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