キスより甘くささやいて
その夜の山猫。
シルビアママは呆れた声をだして、
「颯太、チョットは見えないところにキスマーク付ける
とかっていう気遣いはないのかしら?」と私の首や、うなじを指でたどる。

「ま、ここなんか絶対アザよ。」と鎖骨の下を覗き込む。
颯太は不機嫌そうに
「仕方ないだろ。3年振りに会ったんだから。」
と言い訳しながら、ケーキの箱が入った紙袋を渡す。
私は恥ずかしくて口を開けない。
あの後、シャワーの途中でも、颯太に捕まってしまったので、
gâteauに寄ってここにたどり着いたのは夜9時を過ぎてしまった。

シルビアママは颯太から渡されたケーキの箱を開けて、ニッコリ笑う。
「やっと、『美咲』が食べられる。
颯太ったら、美咲に最初に食べさせたいって言って
私達には作ってくれなかった。」
「昨日、美咲が山猫でぐーぐー寝てる間に用意しておいた。」
とチョット額にシワを寄せて言う。
哲也君がコーヒーと一緒に、
ピンクの花びらを形どったケーキをお皿に乗せて持ってくる。
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