キスより甘くささやいて
「こら、美咲、
いつまでそこにぼんやり立ってるつもりだ?」
と木のドアを 開けて、颯太が顔をしかめる。
颯太、そのしかめっ面はいい男が台無しだよ。
すごく怖いし、と思う。
でも、黒のコックコートと黒いパンツ。
黒く長いエプロンを付けている颯太はキリッと凛々しく見える。
うん。
女の子にかなり人気がありそうだ。
「お邪魔します」
といいながら、店内に入る。
店内はダークブラウンで統一されたインテリアが揃えられ、
結構シックな空間だ。
奥は喫茶室になっているのかな?
テーブルが見えるし、人の話し声が聞こえている。

ケーキの甘い香りが広がる。
ショーケースの中には色とりどりの美味しそうなケーキが待っていた。
「綺麗な宝石みたいだね」
と颯太に言うと、フンと鼻を鳴らす。
それは、肯定の合図ですか?
わかりにくいオトコだ。


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