キスより甘くささやいて
「へえ、高校の同級生なんだ」
と言ったのは、私の前に座ったMr.ダンディこと、片岡さん。
この店のオーナーで52歳で、バツイチ、独身。だそうだ。
結構、お金持ちらしく、この店は道楽だ。と言った。なのに、
「颯太が2年前にここのパティシエにになってから、
段々と口コミで人気がでちゃって、結構忙しくて、」と溜息を付いて、
「僕らの他にティールームで働いてるスタッフが2人いるんだけど、
お休みさせてあげられなくてね。」と笑った。
「それに、うちのパティシエ、厳しくってさ、
バイトの子が決まっても、すぐに辞めちゃうから」
…と颯太を振り返る。
まあ、あの眉間にシワで、怒られたら、私も直ぐに退散したい。
「だからさ、」と片岡オーナーは、
「彼が気に入って、オススメしてくる人なら、続けてくれそうかなって、期待してたんだ。」
ともう1度、深い溜息をついた。

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