キスより甘くささやいて
急いでケーキを口に運ぶ。
ゆっくり味わって食べたいが残念だ。
緊張して顔が赤くなっていくのが分かる。
2人がじっと私がケーキを食べるのを見ている。
片岡さんはニコニコと。
颯太は額にシワを寄せて。
颯太が
「ちゃんと、味わって食え。」と睨んでくるけど、
この状況じゃ、無理っていうものだ。片岡さんが、
「うーん、ここで働く事、やっぱり考えてくれないかな。
山内さん美人で、スタイルもいいから、
ここで働いてるもらえると僕も嬉しいなあ。
君からにっこりケーキ渡されたら、
大抵の人は嬉しくなっちゃうとおもうんだけど。
さっきの美味しいって、笑った顔、とってもかわいいし。」と私をみて、笑う。
えーと、
最近かわいいなんて褒めコトバは聞いたことがないんですがと、
ポカンとして、コーヒーのカップがカチャンと音をたてる。と、颯太が
「ジノリのカップ壊すなよ。
一体いくらすると思ってるんだ?」と私を更に睨む。
私は慌ててカップから手を離し、
「か、帰ります。」
と勢い良く立ち上がると、グラリと身体が傾いて、目が回る。
あれ?
貧血かな。

颯太が慌てて、私に手を伸ばすのがわかる。
「美咲、おまえ、酔っぱらってんのか!?
こら、返事しろ!」って颯太の声が聞こえた。私は
「大丈夫」
と言ったつもりだったけど、
ゆっくり意識が遠のいた。
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