キスより甘くささやいて
颯太は午前中の仕事が終わると、私と一緒に休憩に入る。
奥にある休憩室兼オーナーの事務室
(私が寝かされていた、応接セットがあるところ。)
で私達はのんびりと食事を取る。
まあ、独り暮らしの颯太はコンビニのお弁当やサラダ。
私はアルバイトの身の上なので、
昨日の夕飯のおかずプラスおにぎりとか、卵焼きとか
チョットだけ、自作のお弁当を持ってきている。
颯太はよく交換してといって、私の持ってきたお弁当を食べている。

颯太は私への好意をちっとも隠さないので、
gâteauではすっかり、恋人同士の扱いだ。
付き合っているわけじゃないんですけど、
と言う私の呟きはあまり聞き入れられていない。
仕事の間はしっかり、私に線を引いた態度なので、安心なんだけど、
男性のお客様の接客には注意が必要だ。
私があまり、親しげに話していると、
仏頂面のまま、厨房から店内に入って来て、私を呼びつけるので、
オーナーと私をかなり焦らせる。
(厨房には店内とティールームの様子がわかるようにしてあるモニターが置いてある)

結構、独占欲がつよいのか?
まだ、付き合っていないはずですけど…
でも、女性のお客様には仏頂面のままでも、かなり人気だ。
オーナーが休憩に入る午後の時間に颯太が店に立つので、
常連の女性のお客様がその時間にたくさんやって来るのだ。
颯太は仏頂面のまま、ケーキの説明をしたり、丁寧にラッピングしたりする。
もう少し、にっこり接客できないもんかな、
と私は密かに横顔を盗み見る。
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