キスより甘くささやいて
颯太は先に私を家に送ってくれて、自宅に車を置きに行った。
迎えにくるまでに少し時間があるかなと思って、
私はちょっと着替える事にした。
バイトの時は掃除の仕事があるのでカジュアルな服装ばかりしているからだ。
2階で、少し迷ってから、桜色のセーターと濃いグレーのスカートを合わせた。
黒のヒールを合わせても背の高い颯太とは頭半分くらいの差があるだろう。
とちょっと考える。
165センチ身長があるとヒールの高さに気を使う時がある。
1階に降りると、母がニコニコして、
「でーと?」と聞いてくる。
夕飯は要らないとさっき電話をかけたからだ。
私は顔が赤くなるのがわかる。
「飲みに誘われただけですよ。」と言うと、
「それって、でーとって言うんじゃない?」と笑う。
もう、からかわないでください。
ピンポンとチャイムが鳴って、颯太がやって来た。
「遅くならないように、送ります。」
と母の前では、キッチリと礼儀正しい。
「いってらっしゃい。送ってくれるなら、ゆっくり遊んできて。」
と、笑った声の母に送られる。
颯太は母の前でも、ハイ、と手を差し出してくる。
私が、少しひるんでも、気にせず、私の手を包んで握り、歩き出した。
颯太は
「今日は85点。お願いしなくても、おめかししてくれたから。」とにっこりする。
顔が赤くなる。
「俺が手を出したら、さっと握ってくれると、100点なんだけどなぁ」と私の顔を見るので、
「そ、それは宿題にしといてください。」と顔を背けた。
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