キスより甘くささやいて
山猫のシルビアママは本日もとっても美しい。
私がビールを頼んで溜息をつくと、目ざとくやって来て、
「ミサキチ、溜息はオンナを老けさせるのよ。止めなさい。」と笑って、
「あんな、いいオトコに愛されてるっていうのに
どおして溜息が出ちゃうのかしら?」と私を覗き込む。
「私が、自分に自信がないからかな。」と返事をして、
「昔のオトコが心変わりしてたのにちっとも気がつかなかったの。
気づいた時には他の人と婚約寸前だった。」と顔をしかめると、ママは大袈裟に溜息をつき、
「信じてたからでしょう。ミサキチらしい。」とクスリと笑って、
「また、相手の気持ちが分からなくて、振られて傷つくのが怖いのかな…」と小さく呟くと、
「颯太が相手なら大丈夫。あんなにわかりやすいオトコはいないと思うけど。
颯太の気持ちなら私は良く知ってる。ミサキチが大好きって全身で伝えてきてると思うけど。
あんまり焦らすと、そのうち襲いかかって来ないとも限らない。」と笑う。私が
「えーと、襲いかかられても困るなあ…、
気持ちの整理が終わってないんだよねー」と少し酔った頭で、答えたら、
「その、気持の整理ってヤツはいつまでかかるんですかね。」
と頭の上から声が降ってくる。颯太だ。
すごく不機嫌な顔で、眉間にシワが寄っている。
きゃー、何時からそこにいたの?颯太は
「俺の気持なら、ちゃんとわかるように美咲の身体に教えてやろうか?」と、ぐっと、睨んでくる。
私は耳まで赤くなるのが自分でわかる。
「…もう少しだけ待ってください。」と小さな声で言い返すと、颯太は大げさに溜息をついて
「もう少しだけ。だからな。」と笑って、隣の席に座り、
「惚れた弱みって、いつまで続くんだっけ?」とシルビアママに聞いて、
「ずううーっと。かもね。」と笑われて、また、額にシワを寄せた。
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