キスより甘くささやいて
颯太。」
と私は自分の考えに蓋をして呼びかける。
「颯太のお母さんに花火を見せてあげたい。」と真面目な声で切り出す。
颯太はちょっと驚いた顔をしたけど、直ぐに
「実は俺もそう思ってた。」と笑った。颯太は
「担当の先生にはもう、相談してる。
きっと、何度も見られる時間はなさそうだし、今、体調がいいんだ。
先生には、無理をしたら、そのまま、具合が悪くなるかもって、言われたけど、
母にきちんと気持をたしかめようって思ってた。
由比ヶ浜の花火は僕等家族にとって、特別なんだ。
父が亡くなる前の年に偶然集まって、家族全員で見に行った。
子供の頃みたいで、楽しい思い出だよ。」と話した。私が頷くと、
「夏希にも相談してみる。」と笑ったので、私も笑って、
「どうやったら楽に見に行けるか私も考えてみる。」と言ったら、颯太は嬉しそうに
「美咲。昨日も言ったけど、美咲は人の気持がわかってるヤツだよ。
母の気持も、よく分かってる。俺の気持もわかってるだろ。
まあ、俺の気持にはわかるだけじゃなくて、早く答えて欲しいんですけど。」
とだんだん小さな声でブツブツ言った
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