キスより甘くささやいて
私はもう少し緊張を解いて話す。
「私は、物分かりのいいオンナの振りをしてただけだよ。
智也はオトナだったし、
付き合っていくにはイロイロ口うるさいと嫌がられるでしょう」
と笑ってみせる。
「そおなのか?もっと我儘言って良かったのに。
いつも、笑ってるから、俺のしてる事は気にならないのかって思ってた。
俺、結構強引に口説いて、部屋にも勝手に出入りしてたから、
仕方なく一緒にいるんじゃないかって、ちょっと、不安だったかな」と、弱音を吐く。
私は溜息をつく。
「結構強引だとは思ってましたけど
…好きじゃない人と、2年も一緒にいないでしょう」と私が俯くと、
「今は、もう、好きじゃない?」と、智也の声が聞こえる。
「私を振ったのはあなたです。
それに、もう、ちゃんと信じることが出来ないよ。
きっと、携帯のチェックや、あなたがいる所の確認とかしちゃうと思うけど…」と上目づかいで睨むと、
「それでも、いいよ。美咲が戻ってくれるなら…」と私の瞳を見つめる。
「智也、そんな風にしてたら、私は自分が嫌になる。
私達は終わってるの。
12月に私が家を飛び出した時より、ずっと前に。
あなたが私のいない未来を選んだ時に。」
私はずっと、考えていた事を口にできた。
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