キスより甘くささやいて
颯太は海の前の駐車場に車を止め、私の顔を見る。
「アイツのどこが良かったの?」と眉間にシワを寄せる。
「うーん。頭の回転が速くて、上手く生きられる所?
ずいぶんと我儘で、強引なオトコだったけど、
よく笑わせてくれて、憎めなかったかな」と答えると、
「俺より、ずっと、大人だな。」と呟く。
「オトナだったから、私も背伸びしてた。
上手く、甘えられなくて、気持ちがすれ違った。
次に付き合う人には、聞きたい事が出来たら、我慢せずにちゃんと聞きたい。
それで、わかり合って、ずっと一緒にいられるようにしたい。」
と颯太の瞳を覗く。
「それって、俺との事?」と颯太の頬がが緩む。
そうだよ。
「さっき、昔のオトコに抱きしめられちゃったんですけど
…上書きしてくれる?」と言ったら、
車のシートから身を乗り出し強く抱きしめてくる。
ちょっと苦しいくらいだ。

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