キスより甘くささやいて
花火が終わって、屋上に誰もいなくなっても、お母さんは、部屋に戻りたくなさそうだ。
でも、もう、戻って、輸液を開始しないとね。
と思って、私がゆっくり、腕に触れると、小さな声で、
「美咲ちゃん、ありがとう。
私がいなくなった後、しばらく颯太のそばにいてくれる?」
と私の瞳を覗くので、これからの楽観的な事はいえないな。と思って、
「颯太さんが、必要としてくれる間は、きっと一緒にいます。」
とお母さんに約束する。お母さんは
「一生かもよ」
と笑ったので、私は少し、考えて、
「大丈夫。だと思います。」
と真面目な顔で言った。
お母さんはにっこりして、
「ありがとう。部屋に帰ろうかな」と呟いた。
もう、座っているのが辛いんだろう。
私は支配人と話していた颯太を呼んで、部屋に帰る事にした。
夏希ちゃんが、笑って、
「ミサキチちゃん、あんな約束しちゃって、大丈夫?」と私に聞く。
「うーん。颯太には内緒にしておいてね」と笑っておいた。夏希ちゃんが、
「口がムズムズする〜」と大声で笑った。颯太が
「早く、ドア開けろー」と夏希ちゃんを呼ぶ。
私は、口のムズムズが治りますようにとちょっと呟いてから、非常階段に向かった。






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