キスより甘くささやいて
第5章 もうひとつの海辺の家

忙しい日々

「お邪魔します。」と翌日の夕方に、初めて颯太の家に入る。
颯太の家は丘の1番上にある住宅地で、芸能人の別荘も多くある、高級住宅地だ。
よくテレビに映る江ノ電の鎌倉高校前の横から海沿いに坂道を登ると、
大型の個性的な家が並んでいる。
まあ、わかってはいましたが、颯太の家は、
銀行勤めの父を持つ我が家とはランクが違うお金持ちって事だ。
オーシャンビューが確実な位置に颯太の家は建っていた。
家の隣の自動でシャッターが開く2台分はある駐車スペースに颯太は車を入れ、
厳(いかめ)しいデザインの門を開けて、颯太は私の腰に手を添え、案内する。
デカイ。
真四角な真っ白いコンクリートで出来た家だ。
真ん中にある玄関はどっしりした木材で両開きだ。
片側のドアに鍵を差し込み、ゆっくりとドアを開けると、
広い吹き抜けの玄関は、綺麗な白いマーブル模様のタイルが敷き詰めてあり、
横から螺旋を描いたアンティークな感じの黒い真鍮の手すりが2階に向かっている階段は
シンデレラが降りてきても驚かないに違いない。
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