キスより甘くささやいて

一緒にいたい

颯太がgâteauに戻ってきた。
いつも通りに仏頂面でケーキを作り、店頭に立つ。
いつものお得意様も戻ってきて、
ティールームでお茶と、ケーキを楽しんでいる。
颯太はお母さんのお見舞いの時間がなくなった分、
新作のケーキに打ち込んだ。
颯太は、私に
「昔のケーキ、作り直したほうがいいかな?」と聞く。
きっと、オペラや幾つかの個性的なケーキのことだ。
フランスにいた頃作られたそれらは、毎日、沢山、売れる訳ではないけれど、
ファンがいて、これらのケーキを買うためだけに遠くからやって来る、お客様もいる。
私は昔の颯太は知らないけれど、
このケーキ達も大切な颯太の一部だと知っている。
「作り直さないで、新しいモノを増やすのはどう?
今の颯太のここのお店のためのケーキ。
オペラは私も大好きだから、このまま残してほしいな。」と言ってみる。颯太は
「そうだね。」と笑い、
新しいチョコレートのケーキを作ることにしたみたいだ。
幾つかの種類のチョコレートを取り寄せ、考えているみたいだ。
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