お姫様は愛され病。
「え、巫のところいくのか、お前」

「うん、そうだよ。
かんなちゃんも良いっていってたから」

今日は楽しみだと授業に身が入らずにぼやいたら、結局智行に何を考えてるんだ?なんて言われちゃって応えた結果がこれ。

「つーか、巫のことかんなちゃんって…”かなた”じゃねぇのか」

「あ、そんな事も聞くの?
だって、かなたちゃんって呼んだら恥ずかしいから巫からとってかんなちゃん」

それで定着しちゃってるから俺も変な考えだと思う。
でも、俺だけ違う呼び方だから自慢できる事の一つ。

「ふーん…で、妹は連れて行くのか?」

智行が聞いてくることは、あからさまにかんなちゃんのこと気にしてる。

「え、あいつは用事あるから行かないよ。
何、お前も来る?」

ニコニコと笑ってやりながら言う。
よくよく考えると、こいつ女癖が悪いからかんなちゃんに良い影響がない。はっきり言ってマジで無い。

「おい、明らかに何か俺に対して失礼なこと考えてる顔すんな」

「だって、ワザとだから」

ここまで行ったところで、智行にスパンッとノートで叩かれた。

「じゃあ、今日は智行置いて俺一人でいくわ」

智行は動揺していて、焦るように立ち上がった。

「俺も巫の見舞いに行く」

「はいはーい」

こうなるとわかっていたので適当な返事をして荷物を持って教室からでる。


俺が智行から離れると、クラスの女の子が智行の周りに集まる。
智行も笑顔とかで女子に対応しちゃってる。

俺がほんの少しだけ振り返って見ても、智行は全く気づかないだろう。


「あいつ、何で女癖が悪いんだろう。
あのまま、かんなちゃんに会わせたくない…」

俺の独り言は誰の耳にも届かないまま何処かに消えた。
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