お姫様は愛され病。
俺は卑怯な奴だと、かんなちゃんの家から出て思う。
大きな溜息は自分のやったことを理解しているからこそのものだ。

【俺じゃダメなのに】

俺はかんなちゃんの事を守るけど、ずっと隣に居るべきではないと前々から考え、行動してきた。

でも、今日は違った。
俺が智行に居て欲しくないと思ったから。
あいつにかんなちゃんと仲良くして欲しいけど、あいつはかんなちゃんを傷つけた。

許せなかった。
独占欲とは違うけど、智行にムカついただけ。
俺は悩みながらも家に帰る。


「ゆい、おかえり〜」

「うぉおっ!?」

玄関を開けると、妹の真琴が俺にダイブしてきた。

「真琴、危ないよ。
怪我しないように気を付けないと」

「わかってるよ。でもお兄ちゃん悩んでるでしょ。相談してよ」

妹は抱き締める力が言葉と共に少し強くなる。

「離してくれ。俺は電話がしたいんだ」

「りょーかーい」

行動が多少ゆるい真琴だけど、気持ちは真っ直ぐらしい。
俺は自室に向かいながら電話をかける。

「…もしもし。
お前今、誰とどこにいる?それだけ応えろ」

『ぁあ?女といる。俺の家。これでわかるか?邪魔すんなよ』

「ああそうか。わかったよ」

『そんだけか』

「いや、教えてあげることがある」

いつもとは違う真面目な喋りかたをすると、智行は黙る。

「お前、かなたに怖がられてるぞ。
あいつのこと、どう思ってんの?
…変わったお前を悲しんでたよ、かなた」

『…っ!!俺と巫とは関係ねえ』

「ふーん、じゃあね。
かなたの幼馴染さん」

俺はそれだけ言って、智行を無視して電話を切る。
またしても、溜息がでる。
結局、自室の前の廊下に立ちっぱなしだった。
いきなり、俺に真琴が抱きつく。
よくあることだけど、今日の真琴はいつもとは違った。

「真琴、どうしたんだ?」

「私もかなたのところ行けばよかった。
かなたのこと慰めてあげたかった、自分にしてくれたことと同じようにしてあげたかった」

「えっ?」

かんなちゃんのことを親友だと豪語していた真琴が、こんなこというとは思っていなかった。
でも、よく考えたら今の真琴が明るく振る舞えるのはかんなちゃんのおかげだからだ。

「私が中学校行きたくないって昔言ってた時に、助けてくれた恩人がかなただから、私もかなたを助けてあげたかった」

まるで傷付いたのが自分の時のような表情を見せる真琴。

「じゃあさ、真琴」

「ん〜?なあに?」

真琴は顔を上げて俺を見る。

「学校で、かんなちゃんのことを支えてあげてくれ」

そう言うと、真琴は一番の笑顔で返事をした。

「わかった。そうする」


これは俺と妹の約束。

かんなちゃんのこと守るって。

俺らの恩人であるかんなちゃんを悲しませたくないから。







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