憎さあまってなんとやら
最悪の事態です





私こと姫野夕紀(ヒメノ ユキ)は緑ヶ丘高校で
現在、2年生をやっています。



なぜ私がこの緑ヶ丘高校を
選んだのかというと、




ズバリ。それは、この緑ヶ丘高校の立地場所が、家から近いからだ。



家から近いということは私にとって最も重要なポイントだったのだ。



いわゆる『オタク』の部類に
入るであろう私は、ゲームをしたり
アニメを見たりネットに入り浸ったりと


充実した夜更かし生活を送っている。



ゆえに朝にすこぶる弱い。


朝は少しでも多くの睡眠を取ることに
命を懸けている。




中学三年生の高校受験の時
非常に不純極まりない上記の理由で


早々に受験校を選択した私は悩んだ。



ここまで私を女手で一つで
育ててくれた真面目な敬愛すべき母を


どういった理由で言いくるめ
緑ヶ丘高校を受験するかを。




だが、母を騙そうといつも以上に
挙動不審だった私に母は言い放った。




「あんた緑ヶ丘高校受験しなさいよ。」


「え?!緑ヶ丘、受けていいの?!」


「何?あんた緑ヶ丘高校行きたかったの?いいに決まってるじゃない。」




私は心から喜び、母になぜ緑ヶ丘高校を
勧めるのかを尋ねると


『家から近いから』と返ってきた時は
母との血の繋がりを大いに感じたものだ。



それから付け加えるように
偏差値もそれなりに高いことと
評判も悪くないことを
教えてくれた。



「あ。あと母さんあんたが高校入ると同時にちょっと出て行くから。」



喜びに満ちていた私の顔は
あっという間に、驚愕へと変化したことだろう。



だが、聞けば、仕事の関係で3年間ほど
海外に住むのだという。



つまり高校生活3年の間は一人の時間が
約束されたも同然!


私は俄然、受験勉強に
熱を入れたのだった。



幸い、成績はそれほど悪く無かったこともあり
私は見事緑ヶ丘高校に受かり
今に至るというわけである。



そんなオタクで面倒臭いことは
大嫌いである私は今、非常に危ない状況にいる。



やばい。寝過ごした。新学期早々、遅刻しそうだ。



しかも今日は新一年生の入学式。


私達は、2学年のクラス編成後、
初の新しいクラスメイトとの顔合わせ。

つまり始業式なのである。



うちの高校は校則等は
わりと緩いほうなのだが、なぜか
遅刻者への対応が非常に手厳しいことで(緑ヶ丘校生の中で)有名だ。


遅刻するともれなく放課後いっぱい
担任にお手伝いをするという
面倒臭い罰が待ち受けている。


そんな担任の先生達のためにあるような罰が待っているのだ。


だが、私には大事な放課後を担任にパシられることに費やす暇はないのだ!


帰って即刻、録りためたテレビ番組を
視聴するという使命がある。



なぜ明け方4時過ぎまでゲームに
没頭してしまったのか。



ふと立ち止まり昨夜の私自身を呪う。


数秒の間で、いや、こんなことをしている暇はないと我に帰り再び全力で走る。



ちらりと腕時計を見る。
うん、ぎりぎり間に合いそうだ。



これから学校で
とんでもない目にあうとは知らず
私は学校へと走った。




---------------☆




パンをくわえて走っていると曲がり角で
イケメンとぶつかるという


少女漫画にありがちな
ラブハプニングが起こることも、
遅刻することもなく、


私は新しいクラスの教室の扉を開けた。



SHRまであと2分。なかなかに頑張って走ったと思う。私、偉い。



?「おはよーーー!夕紀ぃ!」



朝からハイテンションで向かってくる友人をサラリとよけ席に着く。



夕「おはよう。真奈美。朝からうるさいぞ。」


真「来るの遅いわよ!進級早々に遅刻してくるのかと思ったよ。」


夕「んなわけあるか。どうした。いつもより格段にテンションが高いな。」



このうるさいのは岡田真奈美(オカダ マナミ)。


真奈美は大きくて、少したれた二重にくわえ

綺麗に染められた柔らかいブラウンの髪を
肩までの長さに切りそろえ、ゆるく巻いている。



その容姿ゆえにモテる。
しかも自分が美人なのを理解しているタイプ。


だが、サバサバした性格の真奈美とは うまが合う。すると自然と一緒に過ごすことが多くなった。
真奈美は一番仲の良い友達である。



真「あっ、テンション高いの分かる〜?えへへ。実は〜…」



語尾に♡マークがつきそうな勢いで
話し始めた真奈美。
なるほど。要約するとこうだ。



学校一のイケメンくん、、、

(本人は否定してるらしい。真奈美いわく謙虚なところもポイント高い!)


他称『学年の王子様』とやらが
この私達のクラスに編成されたらしい。



夕「その王子様には悪いけど、私は存在すら知らなかったんだが。」


真「夕紀、アンタ、知らないわけ?!顔は、すっごいかっこいいのよ!1回すれ違った時ぶつかられて何だこいつとか思ったけどぶつかった後の対応が優しくてまさに王子様なのよ!本性はどうだが知らないけど表の顔は完璧よ」


夕「お、おう。」


なかなかに失礼な言い草だな……。
顔も知らない王子様に少し同情を覚えるぞ。

夕「……ん?…てか真奈美、お前彼氏いなかったか。」


真「王子は王子!彼氏は彼氏!」


夕「なんだ、そのお菓子は別腹みたいな理論は…」


真「いいのよ!!!」



真奈美の彼氏が不憫に思えてくる…。



それよりも。そんなにかっこいいって
有名なんだったら……

その王子様とやら。

是非、一度拝見したいものだ。


まあ、私が関わる事なんて一生ないような人種なんだろうけど。


真奈美の話を聞く限りまるで
二次元から出てきたみたいな奴だ。


二次元イケメンの具現化か……。
ほんの少し興味が湧いた。



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