能あるイケメンは羽目を外す
だから、親父に対しても、継母に対しても、俺はずっと距離を置いていた。

「早いね」とにこやかに言って親父の前の席に座る。

「それで、今日は何で俺を呼んだわけ?」

「見合いの件だ。今週末も空けておきなさい。もう二十九なんだ。いつまでも独身でいるわけにはいかない」

相変わらずの高圧的な態度にうんざりする。

二十九にもなるのに親父にグダグダ言われたくはない。

「余計なお世話だよ。親父が美佐恵さんと結婚する時、俺は何も言わなかった。俺の結婚に口出すのはもうやめてくれる?」

「何?」

親父が不服そうに片眉を上げる。

「そんなに息子の結婚を世話したいなら、翔馬にすればいい。話がそれだけなら帰るけど」

親父を見据えながらそう言うと、俺は腰を上げた。

「陽斗、座りなさい。専務になってから二週間、杉原の報告によると仕事をほとんどまともにしていないそうじゃないか?」

親父が俺に厳しい口調で言うが、それで卑屈になる俺ではない。
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