能あるイケメンは羽目を外す
こうして眠っているとまるで天使みたい。前髪は下ろしていて、若く見えるし……。

昨日の夜の事は全て夢の出来事じゃないのかと思えてくる。

でも……身体の節々の痛みだけがそれは現実に起こった事だと教えてて……。

もうこの人とは会うことはないだろう。

この部屋を一歩外に出れば、私には厳しい現実が待っている。

私の式が駄目になったことは、会社の上司も同僚も呼んでいたしきっと今日中に社内に知れ渡るだろう。

会社には行きたくないが、今日休んでしまえばずっと行けなくなる。

私には頼れる家族もいないのだから、現実と向き合わなければいけない。働かなければ生きていけないのだから……。

夢の時間は終わった。

大丈夫。今までだって一人で生きてきた。それに、陽斗に優しく愛されて……大事にされて……勇気をもらった気がする。

私は陽斗に顔を近づけ、彼の額にそっと口づけた。

こんな私でも大事にしてくれて……。

「ありがとう、陽斗」

そして、さようなら……。

私は別れの言葉を心の中で呟くと、部屋を後にした。
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