能あるイケメンは羽目を外す
「楓がいてくれて良かった」

不意に囁かれた陽斗の言葉に知らず涙が溢れる。

「何で楓が泣くの?」

クスッと笑って陽斗が私の頬の涙を掬い上げるようにペロッと嘗める。

「……わかんない」

でも……陽斗が泣かないからだと思う。

「わからないのに泣くんだ?」

私の頬を優しく撫でて陽斗がなだめるように唇を重ねる。

どこまで優しいんだろう。

今は社長や会社の事で頭が一杯だろうに……。

「俺……適当に専務やって親父が俺に幻滅したらすぐにイギリスに戻ろうかと思ったんだよね。デザイナーの仕事好きだったし……」

陽斗の話に私はただ頷いた。

「……うん」

「でも……翔馬が親父の会社を駄目にしていくのを放っておく訳にはいかない。俺が親父の会社を継ぐ」
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