能あるイケメンは羽目を外す
どこかで見覚えのある顔。

個人的になのか、仕事でなのかは思い出せない。

思い詰めた表情で何度も溜め息をつきながらじっとグラスを見つめる彼女。

しばらく観察していたが、放っておけなくなって気づけば自分から声をかけていた。

今にも消えてしまいそう……そんな気がしてならなかった。

俺らしくない行動。

いや……昨夜の俺の行動全てが俺らしくなかったと思う。

タクシーに乗せて彼女を家に帰すべきだった。

彼女は遊びで付き合うようなタイプの女じゃない。

それなのに、彼女が他の男と寝るのが気に食わなくて彼女の手を掴んでいた。

「逃げるなら今のうちだよ」って楓に言ったが、心の中では逃げるなって願ってて、彼女が逃げなかった事に安堵していた。

楓を見た時から、あの悲しげな瞳に捕らわれていたのかもしれない。
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