能あるイケメンは羽目を外す
病院に着くと、楓を連れて親父の病室に入った。

数日前に見た時より酷く痩せたような気がする。

何で寄りにもよって母親と同じすい臓ガンなんだろう。

胃ガンや肺ガンなら助かる見込みがあったのに……。

運が悪かったとしか言いようがない。

外科手術が出来ない以上、親父が助かる見込みはない。

余命一年?……いや、下手すると三ヶ月……。

来年まで親父は持たないかもしれない。

もう完治しないとはわかっているが、これ以上親父に仕事をさせる訳にはいかない。

俺が……今ここで引導を渡す必要がある。

俺の姿を見て起き上がろうとする親父を俺は制する。

「いいよ、無理しなくて。無様な姿だね。後妻に見放され、自分が起こした会社も傾き……今、親父には何もない」

「……そんな事を言いにわざわざ来たのか?」

「そんな身体で会社に来られても邪魔だから一言言いに寄っただけだよ」
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