能あるイケメンは羽目を外す
だが、楓にそんな場面を見せるわけにはいかない。

一番優先すべきは彼女だ。

落ち着け。冷静になれ。負の感情に支配されるな。

俺が楓を怖がらせたら駄目だろ。

俺は殺気を抑えて再び楓に目をやる。

見るのも痛々しいくらいに傷ついた彼女。

俺はスーツのジャケットを脱ぐと俺の腕の中で震えている楓にかけて、彼女を抱き上げた。

最近やっと普通に笑えるようになった楓なのに……。

「杉原、そいつ専務室に連れてって。楓の手当てをしたら俺も行くよ」

「わかりました」

杉原が俺の目を見て頷くのを見て、俺は楓を連れて秘書室に向かった。

「怖かったね。もう大丈夫だから」

優しく声をかけると小さなソファーに楓を下ろし、自分も彼女の横に腰かけまた彼女を抱き締める。
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