能あるイケメンは羽目を外す
驚きで目を見開く楓の左手を取り、その薬指に指輪をはめる。

「母親のなんだ。楓に持ってて欲しくて」

「でも……そんなお母さんの形見……」

楓が戸惑いながら俺を見る。彼女の声はかすかに震えた。

「俺はつけられないし、楓につけてて欲しいんだよ。これは、俺の我が儘」

楓の手を両手で握り、彼女の目を見つめながらニコッと笑って見せる。

「……私で後悔しない?」

「楓がいれば俺はそれだけで幸せだよ。今日みたいに楓が家に帰るといて、一緒にご飯食べて……。俺の側にずっといて欲しい」

「陽斗……」

楓の目から涙がこぼれ落ち、俺は親指の腹でそっと拭う。

「嬉し涙だといいんだけどな」

優しく微笑んで楓をぎゅっと抱き締める。
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