能あるイケメンは羽目を外す
「……すっかり忘れてた」

思わず額に手を当てる。

行き場を失った荷物。今週末、私は婚約者のマンションに引っ越す予定だった。

このアパートは今週中に引っ越さなければならない。もうアパートの契約更新は出来ないし……。

「……早く引っ越し先探さないと」

重い溜め息を一つつくと、すぐにシャワーを浴びた。

感傷に浸る時間はなかった。

どんなに傷ついても、現実と時間は待ってくれない。

素早くシャワーを浴び終え、鏡を見ながらさっと髪を乾かす。

そして、気づいた。

「あっ……イヤリングがない」

嘘……。どこにいった?

今シャワーを浴びる時……外した覚えはない。

今朝あのホテルを出る時も……イヤリングをつけた記憶はない。

だとしたら……ホテルの部屋に忘れてきた?

……昨日、シャワー浴びる前に洗面台に置いてそのまま?
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