能あるイケメンは羽目を外す
服を着替えて早く部屋を出ることしか頭になくて……イヤリングの事は頭になかった。

「私って……馬鹿だ。……今さらホテルには戻れない。ああ~、もう!」

髪をむしるようにかき上げながら私は呻く。

後でホテルに電話して聞くしかない。ここで悩んでても時間の無駄だ。

新しい服に着替えると、また電車に乗って会社に出勤した。

オフィスに一歩足を踏み入れた途端感じた同僚の視線。かすかに耳に聞こえるひそひそ話。

もう総務部のみんなは、昨日の私の結婚式が駄目になったことを知っているのだろう。

憐れみか……同情か……それとも、好奇の目か。

覚悟はしていた。でも、実際にそういう目でみんなに見られると、この部屋を逃げ出したくなる。

だが、逃げるわけにはいかない。それに、私は悪い事はしていない。

ギュッと唇を噛み締める。
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