能あるイケメンは羽目を外す
飲んでも全然酔えなかった。

こんな事ならもっとお酒になれておくんだった。

どうやったら忘れられる?どうやったら記憶をなくせる?

私はギュッと唇を噛み締める。

「何でそんな事言うの?何か嫌な事があった?」

隣の男性が私の顔を覗き込む。

その優しい切れ長の瞳に、少し警戒心が解かされる。

「……今日は私の結婚式だったの。でも……相手が逃げちゃって。笑えるでしょ?映画みたいな事が本当に起こっちゃったんだもん。早く結婚したくて、仏滅の日に式を決めたのがいけなかったのかな」

フフッと小さく笑う。

結婚する事しか頭になかったのかもしれない。

私の両親は中学生の時に交通事故で他界した。私を引き取ってくれた父方の祖父母ももう病気で二人とも亡くなっていて、今は一Kのアパートに一人暮らし。

誰もいない家に帰るのは寂しい。一人暮らしには慣れたが、ずっと一人でいると孤独を感じずにはいられない。
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