能あるイケメンは羽目を外す
あんな胡散臭いじじいと食事なんて、拷問以外の何物でもない。飯が不味くなるだろ。

「何勝手な事をしてるんですか!成沢さんの事は午後から来てもらうことで納得したはずでは?」

耳に突き刺さるような杉原の口調にうんざりしながらも、俺は落ち着いた様子で話の主導権を握ろうと話題を変えた。

「お説教したいのはわかるけど、問題発生」

『は?』

杉原にしては間抜けな声。

「食事をしようとうちのビルの向かい側のイタリアンの店に楓を連れてきたんだけど、急に彼女が倒れちゃって……。まあ、救急車呼ぶほどではなかったんだけど、今日は仕事は無理そうだからこのまま帰る。だから、杉原、俺の家まで送ってくれない?ついでに、楓の荷物も持ってきてくれると嬉しいんだけど?」

『どうしてそうなるんですか?送るなら成沢さんの家まででしょう?それに、私はあなたの秘書であって便利屋ではありませんよ』

杉原が素直に従うとは思っていない。それならば……と、俺はあえて平然とした態度でこいつとの会話を終らせようとした。
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