能あるイケメンは羽目を外す
「家まで送って頂いてありがとうございました。車の中で休めたし、もう大丈夫です」

他人行儀な楓の言葉。

俺から離れようとする楓の手を掴むと、彼女と一緒に車を降りた。

今の状態の楓を一人に出来るわけがない。

「駄目だよ。着替えを持ってうちに来るんだ」

俺は少し厳しい口調で楓に告げる。

「その必要はありません。仕事……あるでしょう?」

「一人には出来ないよ。部屋はどこ?」

「……それは……」

「どこ?」

目を細めて楓を見据えれば、彼女は小さく溜め息をついてとぼとぼとぼと歩き出す。

そして、階段をゆっくり上ってすぐの部屋の前で立ち止まった。

バッグから鍵を取り出して楓がドアを開けると、段ボールが廊下の半分を塞いでるのが目に入った。
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