能あるイケメンは羽目を外す
俺はそれ以上は突っ込まず、楓に優しく声をかけた。

「ここで待ってるから数日分の着替え用意してきて」

楓は力なく頷き、靴を脱いで部屋の中に入る。

苦境に立たされている彼女。今は身も心もボロボロの状態かもしれない。

「放っておけるわけがない」

俺は……間違っていたかもしれない。

楓の意志を無視して自分の元に来るよう仕向けてしまったが、焦らずにもっと温かく見守ってやるべきだったかもしれない。

車の中では気分が悪かったせいもあるかもしれないが、楓は終始無言で車窓の景色を悲しそうな目で見ていた。

婚約者に捨てられ、身内もいない彼女を守るのは自分しかいない。

楓と出会ったのは昨日。

でも、恋をするのに時間はいらないし、恋は理屈じゃない。

あの瞳に惹かれてしまうのはどうしようもない。

「楓は俺が守る」

小さく呟くと、自分の胸にそう固く誓った。
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