能あるイケメンは羽目を外す
「楓……今は何も考えなくていい。寝て、食べて、元気になることだけを考える」

「陽斗……」

陽斗の名前を呟くと、彼は私の顎をつかんで顔を近づけてくる。

フワッと香る甘いムスクの香り。

キスされるっと思ってギュッと目を閉じると、足音が近づいてきて杉原さんが現れた。

「このグータラ男、いつまで油を売ってるつもりですか!」

ハッと我に返って陽斗から離れる。

……杉原さんがいる事すっかり忘れてた。

「はい、はい。仕事すればいいんでしょ?」

杉原さんの登場に慌てる事なく、陽斗は余裕の笑顔。

むしろ、杉原さんを怒らせて楽しんでいるような気がする。

杉原さんは陽斗の事「グータラ男」って呼ぶけど、陽斗は本当に仕事しないんだろうか?

「会議にも出ないんなら、せめてたまった書類だけでも片付けてもらいましょうか?」
「わかったよ。杉原、そんなに怒ってばっかいると、早く老けるよ」
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