能あるイケメンは羽目を外す
優しく諭すように言って、その男性は私に水の入ったグラスを手渡す。

「これを飲んで終わりにしたら?」

終わり……?

それで……私はどうなるの?

勝手なこと言わないでよ。

誰もいない家に帰りたくないからここにいるのに……。

「……嫌よ。私は今日あった事を忘れたいの!」

駄々っ子のように言って、私は彼にグラスを突き返す。

ひどい八つ当たりだと思う。自分でもわかってはいるが……何かに当たらずにはいられない。

「酒じゃあ忘れられないよ。君がこの先今よりずっと幸せになれば、今日の事はいつか笑い話になる」

そんな上辺だけの慰めの言葉なんかいらない。

私が欲しいのはそんなものじゃない。

「いつか?……そんな日は永遠に来ないわ。もう放っておいて」

「それは出来ないな。僕が放っておくと、他の男に食べられそうなんでね」

男性がフッと微笑する。

……紳士気取り?
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