能あるイケメンは羽目を外す
高そうな高級ブランドの紺のスーツ。きっと私の一ヶ月のお給料よりも高いだろう。

ネクタイはダークグレーで、シャツはブルー。腕につけてるシルバーの時計はマリンブルーの文字盤が凄く綺麗でスタイリッシュで……。お洒落な人なんだと思う。

私とは住む世界が違う大人な男性。

でも……左手には指輪をしてないし、一夜だけなら相手をしてくれるんじゃないだろうか?

「君……馬鹿でしょ?」

男性は呆れた口調でそう言うと、じっと私を見据える。

その軽蔑するような眼差しに、胸がチクンと痛んだ。

……やっぱり私じゃ駄目か。

彼から目を逸らすと、私は掴んでいたスーツの袖を放した。

仕方がないなって思う。

私はどこにでもいる平凡な女だけど、この人は……多分凄く女にモテる人だと思う。好き好んで私を選ぶわけがない……か。

「……興味がないならいいです。他の男の人を誘います」
< 9 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop