保健室の眠り姫は体育教師の受難を夢に見る


「そんな……そんなよくわからない口説き文句で生徒を落とそうとしてるんですか……?」



意味わかんないこわい、と全力できもちわるがって拒絶していると先生はふん、と鼻を鳴らして運転に戻る。



「……嫌でも思い出させてやる」

「ちょっと!」



ほんとにこわいです! と叫ぶと同時に家のすぐそばに着いた。先生はいつも家より少し手前で降ろしてくれる。今日は不安が残るまま、助手席から降りて。



「……ありがとうございました」

「おう」



また明日な、とあくびを噛み殺しながら言う。



「…………」

「…………なに?」



じっと見ていると問いかけられる。



「別に、」

「なんか、待ってんの?」



にやりと笑われて、かっと頭が熱くなる。



「ちがっ」

「じゃあ何?」

「……さよならを言うときは、あくびしちゃだめなんですよ」

「……あぁ」



ごめんね、と言って窓越しに頭を撫でられる。

この手は余計だ。



「また明日」









勘弁してください。

そんな、彼女に言うみたいに、さぁ。
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