保健室の眠り姫は体育教師の受難を夢に見る
「ただの、体育の先生と生徒じゃないですか」
「それで?」
「それでって……」
「まだ何かあるだろう。俺はお前にとって香月先生やみちると一緒か?」
「……」
あえてその二人を取り上げるところに悪意を感じる。
「……市野先生はうちのクラスの副担任です」
「そうだな」
「あと、私が倒れたらよく運んでくれる」
「それもあってる。それは、いつからだ?」
「……」
「覚えてない?」
あぁこの笑い方は、本当に危ない。
他のみんなにも見せてやってほしい。いつも振りまいてる爽やか王子スマイルの下に、こんな悪者顔隠してますよ! 私が言ったって誰も信じない。
裁判官は悪い王様の顔をしている。
「……二年くらい前からです」
「おー、よかった。それは覚えてるんだ」
「なんか、馬鹿にされてるみたいで嫌なかんじです。もうやめません?」
「いーや、やめない」
「…………」
「続けよう糸島。もしかしたらこれで全部思い出せるかもしれないな?」
「…………」
だから思い出すも何も、先生が言うような事実はないし。あのキスや先生の態度はやっぱり問題あるし。
言っても無駄な言葉が頭の中で燻る。
どうしよう。
この悪い王様は、どうしたら倒せる?