保健室の眠り姫は体育教師の受難を夢に見る
次に目を覚ましたときには、今が何時なのかもわからなくて、外の明るさで午後の授業が始まったくらいかな、なんてあたりをつける。
潜っているシーツは自分の体温で暖かくなっていて、少し汗ばんでいた。
ぐるりと保健室を見回しても誰もいない。開け放たれた窓から、グラウンドで体育の授業をする生徒の声が流れこんでくる。
それをBGMに、さっきまでの一連の出来事を思い出していた。
どうして自分はあの時、先生を追いかけなくちゃいけないと思ったんだろう。
どうして先生の下の名前を呼ぼうとしたんだろう。
目を閉じてていいよ、って。
そう言われてほっとしながら悲しくなった理由は。
ふと気付くと、グラウンドからの生徒の声に混じって別の声が聴こえた。
そっとベッドを抜け出して、下履きに足を入れて窓へと近寄る。
ここは一階なのに、声はすぐ真下からした。
「あーなんかいまものすごくいけないことしてるねー、私たち」
「今更だろ」
市野先生と、みちるちゃんの声だ。