保健室の眠り姫は体育教師の受難を夢に見る
中に入ると体育準備室は、前に来たときからほとんど何も変わっていなくて、長机とパイプ椅子の配置もだいたいそのまま。長辺の端と端に配置にされていてやっぱり今日も裁判か、と私の気を重くする。
「それで、昨日のテストだけど」
「え?」
「え?」
「本当に補講……ですか?」
「なんで嘘なんだよ、補講だ」
それとも何か期待してたの? って笑うのはもう無視して一人考える。
じゃあ先生はほんとに諦めたの?
「だって、ほんとに糸島一人だけ点数悪いんだもん。保健体育のテストなんて息抜きみたいなもんだろ。平均95点だぞ?」
「私何点……?」
「82点」
「別に許容範囲でしょう」
「だめ」
「なんで」
「糸島さんはわざと間違って回答してるから呼び出されたんです」
「は?」
「これお前ぜんぶ答え知ってるじゃん」
びろん、と昨日書いた自分の回答用紙を目前に出される。
「なにこの妙にカマトトぶった答え」
「う……うるさいなぁっ!」
100%セクハラでびっくりした!
びっくりして、つい敬語が乱れた。
それを先生は見逃してくれない。
「本性あらわしてきたな小唄?」
にやりと笑った先生が不意に私の名前を呼ぶからとっさに、どんな顔をつくっていいのかわからなくなった。