保健室の眠り姫は体育教師の受難を夢に見る



「先生と生徒って、フィクションみたいだから。何を言っても陳腐になる気がして」

「ふーん……?」

「月並みなこと言うけど、先生だから好きになったわけでもないし」

「俺も、お前が女子高生だから好きになったんじゃないよ」

「…………」

「……おい。〝ほんとかなぁ?〟みたいな顔すんな」





いらっとしたその表情に、なんだかにやけてしまう。



「何、笑ってんの?」

「んーん」



こうだったなぁと思って。私たちって。

この半年間は結構寂しかったのかもしれない。

だからみちるちゃんに途中、〝あなたも我慢が足りないんじゃない?〟なんて言われたりした。


口ぶりからしてみちるちゃんだけが、私たちの記憶喪失ごっこを見抜いていた。
だから本当に、言っていたように〝もう勝手にやっとくれーってかんじ〟だったんだろう。
こんな傍から見れば痴話げんかみたいなこと、おいしくもない。



そっか。

これは痴話げんかだったのか、と。



気付いてやっぱり高校生活の恋愛は、恥ずかしいことばかりだと思った。





「…………あれ?」

「ん?」

「私の家、今のところ左に曲がらないと」

「誰も送るなんて言ってない」

「え」

「どれだけお預けされたと思ってるんだ馬鹿者め! 今日はこのままお持ち帰りだ」

「⁉ どっちが馬鹿者⁉ 私まだ明日テストあるのに」

「大丈夫大丈夫。これで期末の保体のテストは満点だな!」

「…………本当にダメな大人」




セクハラな上に最低すぎてびっくりする。

鼻歌までうたいはじめちゃって本当に恥ずかしい。





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