Do you love me?[短篇]
それでもやっぱり男と女。
奴と私に距離が出来たのは
たかが数十秒。
「…逃げんなよ」
結局追いつかれ、
再度私の手首の自由が無くなった。
…痛い
…怖い
ガタガタ震えているのは
恐怖からだろうか。
こんなのは初めてだ。
「…誰か」
「なに震えちゃってんの?…大丈夫だって」
そう言って、私の手首を掴んでいない、もう一方の手でスルリと頬を撫でられた。
…嫌っ
そう思っても、体が言うこときかない。
逃げ出したいのに、手首は先ほどよりも強い力で、痕がついてしまいそうな力で固定されている。
足も、震えて動かない。
「ふーん」
私の様子を見ていたその男が、
妖しい笑みを浮かべると、私を壁に押し付けた。
いつのまにか両手が固定されてしまっていて、妙に近い距離に冷や汗が流れた。
「…何するんですか」
「何って、分かんない?」
そう言って、近づいた距離。
そして向ってくる顔に、私はぐっと瞼を閉じた。
…もう駄目だ
助けて…仁っ
あぁ、私って本当に馬鹿。
仁なんて…いる訳がないのに。