Do you love me?[短篇]
吐息が掛かりそうなほど、
顔が近づいたのが分かった。
私は目を開くことが出来なくて、
ぎゅっと目を閉じたまま手に力を入れた。
その時だ。
ふっと私の手が軽くなった。
そして、気配も遠のいた気がした。
…どうして
そっと瞼を持ち上げる。
「…じ、ん?」
目を開けたそこには、久しぶりに見る仁の姿があった。
真っ黒な髪の毛。
釣りあがった瞳。
そして、着崩した制服。
「遠田、てめぇ」
「何やってんだよ、お前。」
仁は問いかけに答えることなく、
私に背を向けたまま金髪の男と私の間に立つ。
「こいつに何しやがった」
「はっ、聞かなくても分かってんだろ?」
「…」
一瞬の沈黙のあと
仁の大きな手が振り上げられた。
「仁!」
咄嗟だった。
私は振り上げらたその腕を掴んだ。
…駄目!
殴ったら、殴ってしまったら…
必死で仁の腕にしがみ付く。
「…離せ、何もしねぇよ」
「え」
ちらり、と視線が交わり
仁は諦めたのか振り上げた手を下ろした。
「…いい気になってんじゃねぇよ」
「は?今、なんつった?」
しり込みしていた男は
捨て台詞を吐いて、走り去っていった。
…た、助かった。
腰が抜けてしまったのか、私はその場に座り込んだ。