Do you love me?[短篇]
「…」
「…」
何で仁がいるのだろう
何で仁は助けてくれたんだろう
頭の中はもうごちゃごちゃで、言葉も上手く喉を通らない。ただただ無言で私は仁の背中を見つめていた。
いつもと変わらないその背中。ただ違うのは…私から声を掛けることが出来ないっこと。そして、仁との距離が凄く遠いってこと。
数歩前にいるはずの仁が、
私にはもう手の届かない所にいるように感じられる。
手を伸ばせば、触れられるのに
…触れられない。
何分だろうか。
この状態が続いたのは。
仁は黙って、ただ黙って
私に背を向けて立っていた。
何処かに行くわけでもなく、またこちらを振り向くわけでもなく、ただその場にずっと真っ直ぐに立っていた。
「あ…の」
「…」
勇気を出して掛けた声。
お礼は言おう。
そして、早く…帰ろう。
私の声に反応して仁がゆっくりとこちらを振り向く。
久しぶりに
仁の前に立った気がする。
ただ、ただそれだけなのに
私の心臓はドキドキ鳴りっぱなし。
あぁ、まだ忘れられてないんだって気付かされた。
「…ありがと。助けてくれて。」
「…いや」
あぁ、仁の声だ。
私はそれだけで泣きそうになる。
「もう大丈夫。本当にありがとう。じゃあね。」
私はゆっくりと頭を下げると、その場を立ち去るために仁に背を向けた。仁の近くにいると気持ちが溢れ出しそうになる。
駄目なのに…。