Do you love me?[短篇]





早く、早く。
仁から離れなくちゃ。


そう思っていたのに。






「待て。」


聞こえた声。
それは紛れも無く仁の声で。


一瞬、足を止めそうになった。





『飽きたんだよ、もう。』

『お前にも、…学校にも』



あの冷たい声が忘れられない。
優しい仁。


でも、あの時だけは
あの時だけは違った。



…怖かったんだ。




本気で私を拒絶してた。





「っ」



聞こえてた。
でも聞こえなかった振りをした。




もう、私は振り返れない。
止まりそうになった自分の足を無理やり動かして私はそのまま歩き続けた。




…聞こえない
…聞こえない



言い聞かせるように
呪文を唱えるように



私は足を動かした。
















「香奈枝!」



なのに…どうして?
私の名前を呼ぶの?


必死の私の抵抗。
そんなの関係無しに大声で
怒鳴るように私の名を呼ぶ仁。






飽きられたオモチャは
必要ない。


捨てられるだけ。





それなのに






「…っ」


どうして引き止めるの。
これ以上、どうすればいいの?





ポツリ。
と涙が一滴流れた、その時だった。






ゆっくり近づいてきた足音。
そして、私のすぐ後ろまで来るとぐっと私の腕を掴んだ。




「…じ、ん」








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