Do you love me?[短篇]
あれは、仁なりの優しさ。
…分かりにくいったら。
でも、ちゃんと私のこと見ててくれてたんだね。
「それで?…仁は私のこと好き、なの?」
「は?」
低く、冷たい声が降り注ぐ。
な、何?
「…お前、何言わせてぇんだよ」
「え、いや、あの…」
もしかして言わないつもり?
私にだけ言わせて、自分は何も言わないつもり?
そんな予想が的中したのか
仁は私を冷たく見下ろすと言った。
「言わなくても分かれよ」
「え…そんな…」
ずるすぎる。
自分だけ言わないなんて!
「…良いよ、じゃあ撤回する。」
「…撤回?」
そっちがその気なら
私にだって考えがある。
「今まで言ったこと撤回する。…私、仁のことなんて…好きじゃな…!?」
…ず、ズルイ
好きじゃない、そう撤回するつもりで上を向いた瞬間。苦い味が口いっぱいに広がった。目を開ければ目の前には仁の顔。
き、キスされてる?!
長時間外にいたために冷えた唇が、何度も重なるうちに熱を帯びる。呼吸が難しくなるほど、何度も、何度も。
その途中、
仁の目元がニヤリ、と笑ったのが分かった。
「仁のば…」
「好きだ。」
馬鹿、そう言ってやろうと思ったのに。
そうやって私を黙らせる。
なんて卑怯なんだろう。
意地悪なのだろう。
「…ちょ、いきなり…」
「お前が聞いたんだろうが」
「でも、まだ心の準備が…」
「は?…意味分からねぇ」
仁は女の子の気持ちがこれっぽっちも分かってない。本当に分かってない。
「…はあ、もう良いよ。分かったから離して?」
約束のはずだ。
仁のことを好きだと言ったら開放してくれるはず。
「…ちっ。」
仁は軽く舌打ちをすると
するりと私から手を離す。
それと同時に冷たい風が私を包み込んだ。