Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
けれども、みのりは少しでも作業を進めておいて、遼太郎と約束したように、何とかして休みを取りたかった。
遼太郎はあれから何も言ってこないが、きっと連絡が来るのを待っているはずだ。
休みを取りたいことを切り出そうかと思っていた矢先、切り出す相手の教務主任加藤から声がかかる。
「仲松さん、頼んでた生徒の名簿の件、印刷いつ上がるって?これは新年度始まって、すぐに要るからね。」
作業の途中で、みのりは書類を置いている机まで行き、手帳をめくって確認する。
「ええと…。4月の4日になるって言ってました。」
こんなふうに、何かと加藤に頼られるのも、なかなか仕事を抜けられない理由の一つだ。
当の加藤は、あまりにも煩雑な業務が大量にあって右往左往とし、結局何も手についていない。何か落ちがあっては大変なことになるので、みのりは色んなことが気にかかって加藤の側を離れられなかった。
教務部の教員でも、春休みで家族旅行をするからと言って、ずっと休みを取っている者もいる。
みのりもそんなふうに、自分の都合を優先させて、加藤の了解も取らずに年次休暇を取ることも可能だったのだが、他の教員が大変な思いをすることが分かっていて、仕事を投げ出すことはできなかった。