Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「……何?澄ちゃん?!」
視線に戸惑ったみのりが、澄子を覗き込む。澄子は、やはり遼太郎の話題を言い出せず、恥ずかしそうに肩をすくめて思いとは違うことを持ち出した。
「…いや、3の1の子たち、今日は来てくれるかなぁ~って思って。」
澄子が担任していたのは3年生なので、大学進学などで、この時期はもう芳野に残っていない子も多い。離任式をしても、名残を惜しんでくれる生徒たちがいないと寂しいものだ。
しかし、澄子の心配を聞いたみのりがまた、ニッコリと笑った。その笑顔に、澄子は女ながらに見とれてしまう。
「大丈夫。少なくとも一人は来てくれるよ。」
「一人…?」
「うん。りょ…、じゃない。狩野くんが来るって言ってたから。」
その言葉を聞いて、澄子の勘がひらめいた。卒業式の後も、みのりが遼太郎と連絡を取り合っているという証拠だ。
澄子の胸が、自分のことのようにドキドキと高鳴ってくる。
キーンコーンカーンコーン……。
事の真相を聞き出したかったが、職員朝礼が始まるチャイムが鳴り、結局そのまま機会を逸してしまった。