Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
離任式は、卒業式とは違って門出を祝すものでもなく、少し寂しい気持ちになる。
去年までのみのりは、任期が1年の講師だったので、馴染んだ仲間や生徒たちに別れを告げるために、毎年のように離任式の壇上に上がらなければならなかった。
今年は送り出す側になったとはいえ、縁あって毎日顔を突き合わせて働いていた同僚たちが、明日からもう別々の場所に勤務することになると思うと、やはり心にポッカリと穴が開くようだった。
特に、澄子がいなくなることが、寂しくてたまらない。この1年間、どれだけ澄子がみのりのことを助けてくれただろう。
壇上にいる澄子が、演説台の前に立って最後のあいさつをするとき、みのりはその寂しさのあまり涙ぐんでしまった。
生徒たちの方へと目を向けると、私服を着た卒業生たちも何人か来ているようだ。みのりは目を凝らしてその中の遼太郎を探したが、1年生の方からはなかなか見通せず、離任式の最中は見つけられないままだった。
そこにいると分かっていると、どうしてもその愛しい姿を追い求めてしまうけれど、この時遼太郎が見えなくて、みのりは少しホッとした。