Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
自分の中にある決意を行動に移すかどうか、みのりはまだ迷っていたが、その決意は時を追うごとに大きくなっていっている。
この決断が心に過った時から、遼太郎のことを少し考えただけで、こうやって心が切ない叫びをあげて落ち着かなくなってしまう。
今は仕事中だと、必死で自分に言い聞かせて、みのりは遼太郎を想って浮かんだ涙を押し止めた。
春休み中なので、この日は離任式が終わればそのまま放課となるのだが、離任する教師が担任や副担任をしていたクラスの生徒たちは、教室に入って別れのホームルームをしているようだった。
職員室の澄子の周りにも、卒業生たちが来ていて、楽しそうに談笑している。その手には、小さいながらも可愛い花束があった。
かねてより離任式後に年次休暇を取っていたみのりは、職員室のざわめきの中で帰り支度を始める。
早く、誰もいないところで、遼太郎と二人きりになりたい…。
遼太郎を想って落ち着かなくなる反面、そんなことの全てを覆い尽くしてくれるのも、遼太郎の存在だった。
遼太郎と二人でいられさえすれば、みのりの全ては満たされて、嫌なことも憂いごとも消え去ってしまう。早くその圧倒的な安心感の中に、自分を投じたかった。