Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
それを聞いて、遼太郎は思わずプッと笑いを漏らす。
初デートが城跡だったことを思い出して遼太郎は笑ったのだが、二俣は自分の言ったことが遼太郎に受けたのだと勘違いした。ニヤリとして、いつものイタズラっ子の顔になった。
「そうだよ。みのりちゃん、歴史好きなんだから、いっそのことシルクロードまで行って来たらどうだ?」
「はぁ?シルクロードって、日本史とは関係ないし、何でいきなりそう言うところが出てくるんだよ?遠すぎて、行けるわけないだろ?」
顔をしかめて、真剣に答える遼太郎に対して、二俣は面白そうに白い歯を見せて笑いをかみ殺している。
「それが、そうでもないんだな。砂漠を越えていくシルクロードもいいけど、あるじゃないか。橋本町から隣町へ抜ける県道沿いに…。」
何のことを言っているのか分からない遼太郎は、険しい顔のまま首をかしげた。
橋本町から隣町へ抜ける県道は、吉田高校から高速道路に乗る時に通るので、ラグビーの試合の時にはバスに揺られながら、いつもその車窓の風景は見ているはずだ。
隣町へ抜ける峠道には人家などはなく、ましてやシルクロードなんて…。
――…あ…!
遼太郎の脳裏に、県道沿いに建つ、古めかしく怪しい建物が浮かんできた。そのラブホテルの名前は、確か…「シルクロード」だった。
それに気が付いた瞬間、遼太郎の顔はゆでダコのように真っ赤になった。どう反応したらいいのか分からなくて、わなわなと震えて二俣をにらんだ。
二俣は、そんな素直な遼太郎の反応が面白くてたまらないらしく、声を上げて笑い出した。