Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「…お前!何考えてんだ…!そんなところ、行ったりするわけないだろ…!?」


 一通り蒸気があがって落ち着いた遼太郎は、二俣をにらんだまま、そう振り絞ると唇を噛んだ。


「嘘だ。いくら遼ちゃんだって、みのりちゃんのことが好きなら、そういうことしたいって思ってるはずだ。」


 またしても、二俣に心の底を見透かされていることに、遼太郎は気づいていた。二俣に言われるまでもなく、そういう願望が自分の中にあることは、遼太郎自身が一番よく知っている。

 文化祭の迷路の中での感触と、みのりのアパートで見たその胸元は、遼太郎の想像力の源となった。
 幾度となく繰り返される遼太郎の空想の中で、服を脱いだみのりは、透き通るほどに白く輝いて、触れることさえも憚られるほど美しかった。


 しかし、実際のみのりに相対すると、そんな自分の妄想が恥ずかしくなってくる。手を繋ぐことを考えただけでも、体が震えて思うように動いてくれない。キスをするときだって、自分が何をしているのか分からないような状態だ。

 そんな状態でみのりに触れても、醜態をさらしてみのりに呆れられるのが落ちだ。
 なによりも、初めて結ばれるのに、街道沿いのあんなうらぶれたラブホテルにみのりを連れ込むなんて、みのりを侮辱するようなものだと遼太郎は思った。みのりにだけは、そのことばかり考えているような男とは思われたくない。



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