Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
佐山は樫原には背を向けて、遼太郎に耳打ちした。
「言っとくけど、俺はちゃんと彼女もいるし、ゲイでも両刀でもないからな。」
「僕だって、ゲイじゃないよ。可愛い女の子、好きだし。」
遼太郎と佐山の背中に、樫原自身もゲイじゃない宣言をした。
――……ホ、ホントかよ……?
にわかに信じがたく思いながら、遼太郎は樫原へと振り向いた。樫原は相変わらずニコニコとした表情で、遼太郎と佐山に笑いかけている。
「ま、そういうことだから、心配しないで。仲良くしよう、狩野くん。」
ポンと一つ遼太郎の肩をたたいて、佐山はそう言ってニッコリと笑いかけてくれた。
その佐山の表情を見て遼太郎は、プレーボーイだということに納得した。爽やかで優しげな笑顔に、普通の女子ならばきっと魅了されてしまうだろう。
こんな佐山と一緒にいる樫原も、本当は普通の男子なのかもしれない。
どこよりも男っぽい場所、ラグビー部でもまれてきた遼太郎にとって、樫原のように物腰の柔らかい男子は縁のない存在だった。自分が今まで関わることがなかっただけで、世の中には、樫原のように女よりも女らしい男も存在していてもおかしくない。
そう思い直すと、少し打ち解けられた。